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第200話
ポコンっ
三条から無事に帰宅したとメッセージが届いた。
これは事前に約束したことの1つ。
帰宅したらスタンプでも構わないから知らせて欲しい、と。
自身が実習生だったときは20時21時まで居残り、指導案を纏めるなんて珍しくはなかった。
クタクタの身体で帰宅し、飯も食べず睡眠を貪る。
それが3週間程続く。
教育実習生は研修中5~10回ほど授業を行うのだがその度に指導案を纏め、指導教諭からアドバイスを貰い様々な方向から授業をしてみて、最後に研究授業を行う。
その間ずっと頭はフル回転。
帰宅後も案が顔を出してくる。
あぁした方が良いのではないか。
こうした方が伝わるのではないか。
教師志望ではなかった長岡でさえそう思った程。
真面目なら三条なら殊更だろう。
いくら三条が実家で生活しているとはいえ心配だ。
食事より睡眠なんてよくある話。
あの細い身体が更に細くなったら。
抱く自信はあるが、それとこれとは話が別。
通話アプリを繋げるのも三条の負担になってしまう。
だって、あの子なら笑顔でただいまと言うだろう。
疲れていても。
眠くても。
だから、帰宅の合図だけしてくれと頼んだのだった。
無事に帰ってきたか
あっちも居残りはさせなさそうだな
まぁ、こんな時だしな
自身が現在勤務している学校にも教育実習生が来たのだが、当然のように遅くまでの居残りは控えるよう通達が出た。
みんな若さだけでカバーし乗り切る実習期間さえ、ウイルスが蝕む。
いや、この場合はそちらの方が都合が良い気もしなくもないが。
土日も疲れた身体と脳を回復させる為に寝たり休んだりしてろ、と基本的には逢い引きはお預け。
1度くらいは顔を見に行きたいが、三条に無理をさせたい訳ではない。
ただでさえ、足を引っ張られている状態の子に鞭は打たない。
そこまで鬼畜ではない。
自身も歩んだ道だからこそ、解ることだ。
負けんな
そんな気持ちを込めて、だけど三条が気負わないように短く返信をした。
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