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第204話
「いただきます」
手を合わせ、箸を手に取る。
今日もお弁当箱には大好きな物ばかりがきっしりと、だけど彩り良く詰め込まれていた。
夜の内に残り物を詰めようとしたら、朝作るのが楽しみだから駄目だと母親に言われた。
優しい愛情に感謝ばかり。
「はじめての授業、どうでした」
「難しいです…。
14年も授業を受けていて、反対の立場になるとこうも出来ないことばかりなんだって実感してます。
先生方って、やっぱりすごいですね」
「すごいですよね。
僕は、いまだに全然慣れません……」
飾らない姿に首否した。
言う通りにいまだに慣れないのかもしれない。
それでも、受けた授業は忘れていない。
涼しい風の通る生物室。
そこで白衣をはためかせながら教えてくれる先生の授業。
好きな時間だった。
「先生の授業は丁寧で好きです。
話す早さが丁度良くて、板書をしたりメモをしたりで焦ったりダラけたりしないんです」
「そう……なん、ですか…」
「はい。
サッと書いて説明して次にいく為にすぐに黒板消す先生とかいますけど、それって理解が伴わない授業じゃないですか。
…そう、ならないように気を付けて話してるんですけど、難しいですね…」
「授業の準備とかの方が…得意です…。
けど、そう言ってもらえて嬉しいです。
ありがとうございます」
おにぎりを手にしたまま、相川は力を抜いて笑った。
「腕時計を卓上に置くのも良いですよ。
備え付けの時計は上なので目線でバレますが、卓上ならなにかのついでに視界に入ります。
僕も、学生の時に教えてもらったやり方ですが」
「そっか…」
プレゼントの腕時計。
黒板に書いたり教科書とノートを持ちかえるようなタイミングで時刻を確認していたが、いっと外してしまうのも良いのか。
「それにしても、三条くんはよく食べますね。
とても気持ちが良いです」
「食べるの好きなんです」
「麦茶も沢山飲んでください。
熱中症はこわいですからね」
「はい。
ありがとうございます」
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