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第211話

「さっきの、長岡先生のことじゃないんですか」 「あ、…そう思いますよね」 綺麗な顔立ちといえば、長岡の顔が思い浮かぶくらい端正な顔だ。 それは亀田もそうらしく、恩師の名前を口にした。 「でも、個人情報ですからね。 長岡さんは、あまりそういうのを好ましく思わないでしょうし」 「はい。 先生は、きっと好きではありません。 オンオフがしっかりしているイメージだったので、濁してしまって…」 「良いんですよ。 相手のことを自分のことのように考えられるのは三条先生の素敵なところです」 「そんな…」 そんなものではない。 恋人として接する長岡が、そういうものを好まないと知っているだけ。 元々知っているのと、相手を思うのは異なる。 そんな褒められたことではないのに。 「1週間ですが、一緒にいてそう思いました。 気立ての良い子だなと。 素直なのも誇って良いんですよ。 三条先生は、それに胡座をかきません。 謙虚ですもん。 だから、大丈夫ですよ」 「はい」 長岡が、亀田のことを尊敬する理由が分かった。 心からの言葉をくれる。 少し離れたところから見守っていてくれる優しい心の持ち主だ。 多くを口にはしないが、きちんと見ていてくれる。 「亀田先生、ありがとうございます」 その優しさに、心がきゅぅっと喜んだ。 「はい。 あ、そうだ。 後で、良いものを見せたいので暇な時に声をかけてください」 「? はい。 分かりました」

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