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第213話

にこにこする亀田につられて三条もふにゃふにゃと笑う。 漸く緊張がほどけてきた。 亀田はそう言いながら三条の手のひらにキャラメルを転がした。 「お世辞を言ってくれたので、そのお礼です」 あぁ、長岡もこうしてももらっていたのだろう。 甘い優しさを握りしめた。 「ありがとうございます! けど、本当にお若いですから」 「こんなジジイに優しいですね」 「そんなことないです…」 本当に、そろそろ定年とは思えない。 他の職員もそうだ。 教師というのは年をとるのがゆっくりに見える。 勿論、長岡もだ。 「あの、この写真を写真に撮っても良いですか」 「えぇ。 勿論。 あ、長岡先生には秘密ですよ」 亀田は、口の前に人差し指を立て悪戯っぽく笑う。 「はい」 スマホに収まる若い恩師。 これは、お守りだ。 みんな通った道だと。 そして、零れた種が続いていると理解する為に。 「頑張れます」 「流れる水は腐りません。 時には、自然に身を任せることも大切です。 心を守る為に」 「え?」 「長岡先生にも言ったんですけど、三条先生同様に真面目な方ですから」 目尻の皺を深くする亀田には敵わない。

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