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第222話
顔を洗い、髪の毛を軽くセットする。
ダラしなくないように、清潔に、だけどお洒落過ぎないように。
初日には社会人っぽいなと思っていたそれらを今はサッと出来るようになった。
それだけ学校に教育実習生として通ったんだ。
その間に学んだことを発揮する。
それが今日。
洗面所から戻ってきた三条は一晩中繋がったままの長岡の部屋を覗いた。
画面の向こうで朝ご飯代わりのコーヒーを飲みながら朝の情報番組を眺める長岡が欠伸をする。
繋げてるだけで特に会話はしないが、こういうのをオンライン同棲と言うらしい。
なんでもオンラインを付けたがるのは、このご時世だからだろう。
結局のところ、どんな危機であろうが慣れてくればネタにする日本人の適応力の高さを理解した1年半でもある。
あんなに我慢ばかりの1年だったのに。
暗いよりは全然良いが。
真っ白なYシャツにプレゼントのネクタイを締め、長岡から借りているタイピンで固定する。
それから腕時計。
沢山の恋人に囲まれ頬が緩んでしまう。
これだけ包まれていれば、今日の授業も頑張れる。
……けど、本当は長岡にも見て欲しかった。
憧れの先生だから。
その授業に惹かれ目指した道。
ロマンを知ったのは長岡先生のお陰だから。
だけど、距離はどうすることも出来ない。
見てはもらえないが、俺の教え子だと胸を張ってもらえるような授業をする。
それは絶対だ。
『遥登』
「はい」
『うん。
今日も格好良いな』
「格好良いのは正宗さんです。
今日もすごく格好良いです」
『まだ髪もボサボサだろ』
「無造作ヘアみたいです」
『ははっ。
そりゃ、お洒落だな。
それにしても、今日は1段と俺のって感じがして良い。
後で写真くれ』
着替え終わったからか、少しだけ会話が続く。
「正宗さんもくれるなら」
『俺のなにが欲しい?
ちょっと際どいのか?』
わざとからかうような色を含んだ声だが三条は嬉々として食い付いた。
「良いんですか…?」
『良いですよ』
「へへ」
『沢山飯食って、水分摂って熱中症には気を付けろ。
気を付けてもなるけど、それでもだ』
「はい」
『出し切ってこい』
「はいっ」
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