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第223話

大鏡。 作者不明の、藤原道長の栄華を中心に描かれる歴史物語。 大鏡、今鏡、水鏡、増鏡と合わせ鏡物や四鏡と呼ばれる作品。 また、四鏡には数えられないが吾妻鏡や後鑑もある。 高校に通っていたら軽くとも触れる有名な話だ。 「大鏡を訳す時のポイントは、老人の昔語りということです。 まず、丁寧語などの会話特有の表現に注意してください。 それから、敬語が沢山使われているので、敬語から主語を判断するが難しくなっています。 難しいだけで丁寧に読み取れば分かるので、接続助詞を確認して文脈を丁寧に把握してみてください」 まずはポイントの確認。 敬語ばかりだが、ゆっくりと丁寧に読み取れば大丈夫。 そう伝え、敬語の確認をはじめてもらう。 尊敬語、謙譲語、丁寧語。 今回は分けたところではっきりと主語を特定出来る答えにはならないが、ヒントにはなる。 だから、それぞれを区別するところからはじめる。 古典は、丁寧にしていけば大丈夫だ。 教卓の上からグループごとに話し合う姿を見つつ、教室後方部に集まる教員達をチラ見した。 指導教諭をはじめ、亀田や相川、在学中他の教科を担当してくれた教師達が廊下からも覗いている。 相川と目が合うと、優しく目を細めてくるた。 亀田も頷いてくれる。 見守っていてすれる人のあたたかさと心強さが背中を擦ってくれていた。 敬語の確認が終わったら、単語の確認。 1つひとつを丁寧にしていくことで、訳が簡単になる。 下準備は大切だ。 それは勉強だけではない。 この研究授業だってそう。 だから、大丈夫。 三条はそっとタイピンに触れた。

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