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第224話
「じゃあ、次の現代語訳をお願いします」
「兄二人が立て続けに死んで、道長が実権を握ったのはすごい驚いた。
大昔のことはよく知らんけど、私が覚えている限りでは、忠平、実頼以外に、十年以上政権を握り続けた人はいないから、道長もそう長くないんじゃないかと思ってた。
だけど、この人だけは強運だった。
兄達が早く死んだのが幸いして、長く政権を執ることになった。」
「知らんけど、って」
クラスの中に小さな笑いが漏れた。
「良いですね。
知らんけどって使いますよね。
道長達は早くに亡くなってしまい幸運にも10年以上、政権を握ることになります」
口語訳なんてぬるいくらい今の言葉を使うことで親しみを感じたのか、いつもより生徒達の表情がやわらかい気がする。
わざわざ難しく思わなくたって良いんだ。
もっと楽しく思って欲しい。
友達と話すように。
気軽に。
言葉とは時代と共に変わっていく。
だから、死語という言葉があるんだ。
死んでいく言葉と、生まれてくる言葉。
言葉とはやわらかく、時に鋭利で、重くも軽くもなる。
受け取る側に合わせても良い。
送る側が変えても良い。
同じ思いが伝わるなら。
メモをとる教師達がどう判断するかは分からない。
けれど、古典の面白さを表面だけで良いから知って欲しい。
こんなにロマンの詰まったキラキラした作品だから。
三条は更に授業を進めていく。
50分という時間をフルに使い、古典を説いた。
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