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第226話

ヴヴッ 『実習が終わりました。 少しだけ、お邪魔しても良いでしょうか』 恋人からだ。 時刻はまだ遅いとも言えない時間。 けれど、丁度スーパーへと向かう道すがらだ。 このまま買い物を済ませてから自室へと帰ってもそうは遅くはならない。 それに、時刻的に実習終わりのはずだ。 着の身着のまま、つまりは電車での移動。 帰りを送ることが出来る。 なら、答えは決まりだ。 『飯買って帰るから先に部屋に入っててくれ。 冷房つけて、部屋を冷やしておいてくれると嬉しい。 冷蔵庫にある飲み物飲んで待っててくれ』 『ありがとうございます。 分かりました。 気を付けて帰ってきてください』 帰ってきてください、か 良いな オンラインではなく、本当に同棲出来たら楽しいだろう。 遥登の出迎えてくれる、遥登を出迎えられる日々の鮮やかさ。 三条の嫌な1面を見られるのもまた一興だ。 楽しいだろう。 喧嘩もしてみたい。 そうやって、毎日過ごせたらどんなに楽しいか。 長岡はマスクの下でふと笑う。 助手席に置こうとしたスマホがまた震えた。 画面には待ってますと書かれたスタンプ。 早く帰ろう 早く買い物を済ませ、少しでも早くあの部屋へと返りたい。 けれど、絶対に安全運転でだ。 あの笑顔の隣に無事に帰ることが今の最優先事項。

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