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第227話
鍵を差し込み施錠を解除すると、小さく足音が聴こえてきた。
部屋にいる証拠だ。
なんて心地良い音なのだろう。
「ただいま」
「おかえりなさい」
ドアを開ければ、スーツ姿の三条がはにかみながら出迎えてくれた。
なんて良い出迎えだ。
デレる顔を抑えきれない。
「お疲れ」
「疲れてなんて…、正宗さんは毎日していて」
「社会人と学生を比べる必要なんかねぇよ。
遥登は頑張った。
花丸です」
上り框の分だけ大きな恋人を抱き締める。
三条は、充分に頑張った。
それは褒められることだ。
頑張ったことは素直に褒めて良い。
謙遜が美学だなんて糞食らえ。
そんなことで自尊心を削る必要はないんだ。
「へへっ」
「えろいにおい」
「えろくないです…あっ、汗くさいですよね…っ。
すみません」
「頑張った証拠だろ。
つか、疲れたろ。
眠くねぇか」
「大丈夫です。
まだ頭が興奮してるのか、疲れたってよりやりきった感の方が強くて、とても元気です」
「そういうもんだよな。
飯食えるか?
一緒に食おうぜ」
良いの?ほんとに?と目が言っている。
あぁ、愛おしい。
久し振りに会えた恋人はまた一回り大きくなっていて格好良さも増している。
成長期の恋人らしい。
「うどん食おうぜ。
大根おろしと梅肉のっけて、前に遥登作ってくれたろ。
今度は俺が作るから」
「嬉しいです。
でも、ご飯は一緒に作りましょう」
「そういうところな」
「?」
まぁ、良いか。
漸く気兼ねなく会えるようになったのだから、ゆっくりと恋人同士の時間を味わいたい。
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