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第228話

「美味しいです!」 「そりゃ良かった。 足りるか?」 「家でもご飯を食べるので大丈夫ですよ」 「そういやそうだったな。 でも、沢山食ってくけ。 遥登に食わすの楽しいからな」 「はいっ。 ありがとうございます」 冷たいうどんを啜りながら、長岡と話をする。 直接顔を見て話すのは久し振りだ。 それにしても、いつ見てもどの角度から見ても綺麗な顔だ。 うどんを噛み締めながら、ジッと見詰めてしまう。 「えっち」 「えっちじゃ…ありませんよ…。 生の正宗さん久し振りだから…沢山見たいなって…」 「俺も、生の遥登沢山見てぇな」 「……えっちかもです」 「ははっ、だろ。 でも、分かるよ。 遥登がいてくれるだけで、こんなご機嫌だ」 ぽふっと頭を撫でられる。 ぽふ、ぽふ、と優しく。 満更でもない三条は尻尾を振って甘えている。 珍しい姿に長岡の箸はとまった。 「で、実習どうだったよ」 「本当に、先生ってすごいなと思うばかりでした。 あと、後ろまでしっかり声を届けるのが大変でした。 マスクしてますし、籠っちゃって。 模擬授業がある時は音量計測しながらしてたみたいなんですけど、俺は出来ませんでしたから感覚掴むのが難しかったです」 「俺達もまだ慣れてねぇよ。 隣の教室から大声聞こえてくるとかもあるしな」 「そうなんですか?」 「そうそう。 自分の声の音量なんて感覚だろ。 耳で聞こえる音量と、実際のそれが同じなんてねぇし」 「そっか」 「まぁ、後ろまで声を届かせるのはしっかりしねぇとな。 個人的に質問にこれる奴とそうじゃねぇ奴がいるし。 気は配ってなんぼだろ」 「そういうところ、大好きです」 「そういうところ以外は?」 「それも大好きです」

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