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第232話

ネクタイを引っ張られリードみたいになる。 写真を撮られるのかと身構えたが、シャッター音は聴こえない。 だけど、レンズ越しに舐められるような視線を感じる。 「プレゼントしたネクタイも、貸したタイピンも、使ってくれてんのすげぇ嬉しい」 「俺こそ、ありがとうございます…」 気のせいだと思いたい。 会話だって普通の、なのに。 目が。 「大切に使ってくれてんだな」 「そんなの、当たり前です」 目が。 「嬉しいよ」 あの目だ。 「けど、外そうな。 後で締めてやるから」 「はい…。 お願い、します」 この口は、なにを言ってるんだ。 ネクタイを外される。 はだけろと言われた。 “どんな”写真を撮られるかなんて想像は容易い。 ネクタイがほどかれ、今度は首へと指先が伸びてきた。 器用に小さなボタンを外され首元が楽になる。 けれど、それでは止まらない。 汗を吸収するシャツが見えてもボタンが外れていく。 あぁ、ゾクゾクがとまらない。 「されるがままで良いのかよ」 「……、」 「3週間まともに処理出来てねぇってところか」 「……、は、い」 「なら、なんとかしてやるよ」 口の中がジワッと甘くなった気がする。

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