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第249話

慌ててやってきた三条に長岡は、よと軽く手を上げた。 そして、自宅から死角になるよう少し離れる。 それに着いて行きながら内側に入り込んでしまったフードを直した。 「足元濡れてるじゃねぇか」 「だって、折角来てくれたのに顔だけなんて寂しいです。 あの…もしかして、俺……約束忘れてましたか…?」 「んなの気にしなくて良いのに律儀だな。 約束はしてねぇよ。 俺が会いてぇから会いに来た」 “たった”それだけの理由。 “たった”じゃない理由。 口角が自然とだらしなくなり、ふへっと笑う。 三条がどれ程に嬉しいのかその顔を見れば分かる。 「勉強は良いのか」 「休憩です」 「休憩も大切だ。 俺は少しだけ散歩すっかな」 「コンビニまでですか?」 「よく知ってるな。 まさか、遥登もか?」 「はい。 偶然ですね」 傘と傘の間で繋がれた小指。 自然と絡まる様になったのを三条は気付いていない。 長岡がそれがどれ程嬉しいかも。 「すげぇ集中してるから俺が部屋から出たの気付かなかったろ」 「あ…、そういえば…」 「良いよ。 遥登のそういうとこ、すげぇ好きだしな」 傘の間から落ちる雫が上着の袖がびょしょびょしょに濡れたって気にならない。 三条と長岡は楽しそうにデートをはじめた。

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