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第255話

炊事場が奥まった場所にあるとはいえ、蓋をせずに掃除をするのは憚られる。 他に出来ること。 冷蔵庫内の掃除…と思ったその時、丁度良く洗濯機が終わりを知らせた。 洗濯物に呼ばれ脱衣場へと顔を出すと、むわっとした重い空気が全身を舐めた。 部屋は冷房で涼しいが脱衣場は暑い。 まだ数分といないのに、しっとりと汗をかいている。 折角綺麗にした洗濯物だ。 汗で汚したくはない。 なるべく腕にくっ付かないように取り出し、籠にいれていく。 そして濡れた洗濯物を、シーツや布団カバー、ブランケットなどの大判物と交換条件する。 再度ボタンを押すと籠を抱えベランダへ。 ベランダには燦々と太陽光が射し込んでおり、すぐに乾くだろう。 靴もファブって天日干ししようか。 汗をかきながらハンガーを引っ掻けていくのだが、どうしてもここから見える学校が気になる。 今年度もオンラインのみなのだが、あそこに通えたのは1年のみ。 高い学費を払ってもらっているのに。 確かに、オンラインでも勉強は出来る。 勉強が学生の本文だ。 勉強が出来るならそれで良い。 の、だけど…。 いや、だから元気なんだろうな 元気じゃなきゃ、正宗さんとデートも出来ないし、こんな風に部屋にも来れないし 影を見て、光を知っても良い。 光を見て、影を知っても良い。 どちらが善だ、悪だ、なんてことはないのだから。 これが終わったら、少しだけ散歩をしよう。 あの甘味処に行き餡蜜を買いたい。 そうしよう。 そうと決まれば、洗濯物を早く干そう。

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