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第258話
授業のない大切な時間。
今のうちに雑務を片付けて、今日は早く帰るんだ。
恋人が飯を作っていてくれる。
例え、その本人がいなくとも居た痕跡が濃く残っている部屋だ。
それに、オンラインを繋げながらの晩飯。
いつもより仕事にも気合いが入る。
パソコン画面に文字を打ち込み続けていると、傍らに置いたスマホがメッセージを知らせた。
ロック画面には恋人の名前と送られた物が動画であることを表示している。
自分しかいない準備室。
背中を丸めたままロックを解除した。
そこに写るのは、頭を撫でられ気持ち良さそうな顔をしているサクラ猫。
この顔なら喉も鳴らしているだろう。
万が一を考えて消音で再生しているが、それが分かるのは自身の実家に愛猫が2匹家族てしているからだ。
会えたのか
会いてぇって言ってたからな
それにしても、サクラ猫が羨ましい。
三条の白くて細い骨張った手が、こしょこしょと頭を擽っている。
これはなんとも気持ち良さそうだ。
俺も撫でられてぇ
部屋に帰れば、この子の手料理が食える。
この猫には味わえない食事が。
それでも、羨ましいと思ってしまう。
週末のデートの時に自分もしてもらおう。
撫で、擽ぐり、そして手を繋いでデートだ。
猫にまで妬くなんて、三条は喜ぶだろう。
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