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第263話
夏休みはあっという間に終わり、いつも通りの賑やかさを取り戻した学校は楽しそうだ。
忙しくはなったが、それでも生徒達の声が響く校舎の方がうんと好き。
「長岡先生、質問しても良いですか」
「大丈夫ですよ。
どこですか」
授業が終わり生徒に捕まる。
3学年だ。
休校なんかで学力に不安があるのか多くの生徒に声をかけられる。
不安は勉強をこなしても拭えないだろう。
不公平だ。
不満がある。
それでも、真っ直ぐな目をしている。
自分に出来ることは、そんな子達に知識を伝えること。
推薦が間近に迫りピリピリしていても、そんなのA組で経験したことだ。
任せておけ。
「ここはまず、敬語の種類を見分ける為に主語が誰なのかを確認します。
誰が言ったのか主語がありませんよね」
うん、うん、も頷く頭。
メモを書き込む姿。
真面目に頑張る人こそ応援したいだろ。
頑張る人が馬鹿をみるなんて、あんまりだ。
その為に時間もいくらでもつくるから。
どうか負けないでくれ。
「出題されやすいものは覚えてしまった方が楽です。
誰から誰にあてた話なのか。
それと、確認の癖を付けると楽です。
プリントが必要なら用意しますから言ってください」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
丁寧に頭を下げてから教室へと戻っていく背中を見送り、長岡も準備室へと急いだ。
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