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第267話

小指を繋いで三条の暮らす街をブラブラとデートする。 リュックを担ぐ三条は、マスクをしていても分かるほどご機嫌だ。 「遥登、小指じゃなくて手ぇ繋がねぇか?」 「え、良いんですか」 「甘やかしてくれんだろ」 「っ! はいっ!」 あたたかな手を、ぎゅっと握り締める。 細くてあたたかくて、指輪の感覚が固くて。 確かな男の手がこんなにも嬉しい。 「嬉しいです」 「俺も嬉しい。 コンビニ寄るか? 飲みもん買おうぜ」 「はい」 「んじゃ、遠回り」 すっかり覚えた遠回りの道を選ぶと、三条はクスクスと笑った。 近道も覚えている。 抜け道だってな。 細い一方通行の道だが、すっかり1人でも歩けるようになった。 これだけデートを重ねた証拠だ。 こんな世の中になる前は部屋ばかりでデートをしていたが、こんな世の中になったお陰で外でのデートが出来る。 良いのか悪いのかは判断出来ないが、何事も悪いことばかりに目を向けたらしんどくなる。 そう教えてくれたのは三条だ。 「なに笑ってんだよ」 「近道じゃないんだなって」 「デートだろ」 「はいっ」 「なら遠回りだろ」 「正宗さんのそういうところ大好きです」 しっかりと握り返してくれる手に笑みが止まらない。 大好きでたまらなくて、今すぐそこの物陰に引き摺り込んで色々したくなる。 こんな時じゃなきゃな… くっそ

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