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第268話
ペットボトルとケーキを買って駐車場へと戻ってきた。
8月の終わりだと言うのにまだ夜も暑い。
三条はマスクをずらして汗を拭い、長岡も肌に張り付くシャツをバサバサと剥がしてから車へと乗り込んだ。
早々に冷房を点け車内の温度を下げる。
「ケーキのクリームだれちゃいますかね」
「早く食うか。
ほら、ウェットティッシュ」
「ありがとうございます」
運転席から後部座席へと移動し、三条の隣を確保する。
その嬉しそうなこと。
学校での長岡しか知らない人が見たら驚くだろう。
やわらかく愛おしいものを見る目。
そして、デレッデレの姿。
「あの、その前に…。
これ、誕生日プレゼントです。
受け取ってもらえますか…?」
「良いのか?
ありがとう」
リュックの中から取り出された紙袋。
その中身を見て驚いた。
「ワイシャツ?」
それだけではない。
「靴下にパンツ。
シャツ」
どれも身に付ける物だ。
ただ1つ分からないものが手の平に。
「悪い、これだけ分からねぇ…」
「それはボトムスのウエストを調節するクリップです。
前に緩いって言ってたの思い出して」
「へぇ。
便利なの知ってるな。
でも、なんで身に付ける物なんだ?
つか、パンツ1枚で十分だぞ」
「あ……」
三条の顔がカァァッと赤くなった。
そんなに赤くするほどやましい理由が思い浮かばない。
「学校でも…俺のこと、近くに感じてて欲しいと言いますか……せめて、プレゼントだけでも、近くにいたい、です」
愛されている。
深く、深く。
自分が考えているより、もっと、ずっと。
胸の奥から気持ちが溢れて止まらない。
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