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第272話
「じゃ、また後でな」
「はい。
帰り道、気を付けてください」
「任せとけ。
安全運転で帰るよ」
名残惜しいとばかりの顔に後ろ髪引かれるが三条は帰さなくては。
ご家族と一緒に暮らしているから安心出来るのもあるのだから。
自宅近くの曲がり角まで手を繋いで来たが、三条は離そうとはしない。
「次のデートは、ドライブにすっか」
「え、良いんですか」
「勿論、良いですよ。
お洒落してくる」
パッと顔色がかわり、パタパタと尻尾が揺れる。
すげぇ喜んでる
犬みてぇ
かわい
「俺も、頑張ってきますっ」
「えっろいパンツ履いてきても良いからな」
「っ!!」
今度は顔が真っ赤にかわる。
クルクルかわる表情が好きだ。
三条らしくて、自分にはないもの。
豊かな感性も、表情も。
勿論、性格も顔も好きだ。
「そんなの、持ってません…」
「じゃあ、今度買ってやるよ。
プレゼント。
意味、分かるよな」
喉の奥から不思議な音が漏れた。
大丈夫か?
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です…っ」
「どんなのが似合うかな。
後で相談しような」
「俺より…正宗さんの方が…」
「遥登に似合うの探すんだよ。
約束な」
「…え、と…」
ケツ丸見えのや、際どいの、羞恥心を煽るものは沢山ある。
その中からなにを選ぼうか。
三条はなんとか回避しようと頭をフル回転させているが、やめるつもりはない。
「じゃ、先に風呂済ませて待ってろよ。
俺もシャワー済ませたら、候補送るから」
漸くいつも三条に戻り、少しだけ安堵する。
寂しい思いをさせたい訳ではないが、会えば別れが寂しくなる。
こればかりは、どうしたら良いのか分からない。
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