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第276話

小さな画面には恥ずかしそうに手で顔を隠している。 本当に三条は素直で可愛い。 「いじめすぎたか?」 『……大丈夫です。 俺が、照れすぎてて…』 「黒子の位置は今度教えてやるよ」 『それは…』 湯船の中で小まめに体制を変えながら三条とくだらない話を続ける。 別に意味のある話ではない。 しなくたって良い話だ。 だけど、三条とならしたい。 田上や吉田の話、高校であったちょっとした話、ぽつぽつと話ながら同じ時間を過ごすのが良いんだ。 『正宗さんって、恥ずかしいって思う時、ありますか?』 「普通にあるよ」 『例えば…?』 「猫に話し掛けてるところを近所の人に見られた時とか」 ごみ捨てに行った時に、よく出会すサクラ猫。 つい柏や蓬にするように、おはよう、今日もあちぃな、水飲めよ等を話し掛けてしまう。 それを階下のご夫婦に目撃されたのは一度や二度ではなくて。 しかも、ふふ、可愛いですね、っていつも言われるんだ。 だせぇ私服を見られるより、羞恥を感じる。 あれは、保護者の目線だ。 『正宗さん、猫好きですもんね』 「普通だろ」 『柏くんと蓬ちゃんが1番可愛いです?』 「遥登の次にな」 『俺は猫じゃないですよ』 「ネコだろ。 ボトムが良いか?」 『え、…あっ』 漸く意味が分かり三条はまた顔を隠した。 やっぱり、この顔させるのがすごく楽しい。 ご機嫌なまま入浴は続いた。

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