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第278話

夕日が差し込む部屋の中は真っ赤だ。 ベランダからぼーっと赤い空を眺め、先程の事を考えていた。 自分の道は自分の満足のいく選択で決めたい。 これは、自分の生きる道なのだから。 それに… ふと聴こえてきた施錠の解除される音に廊下へと出た。 「正宗さん、おかえりなさい」 「ただいま」 革靴を脱ぎながら頭に触れようとした長岡は、その手を引っ込めた。 ウイルスが気になるのだろう。 だから、三条はそっとスーツの端に触れた。 「お待ちしてました」 「やべぇ、ニヤける…」 「会えて嬉しいです」 「そりゃ、俺の方だ」 大学の帰り、少しだけ会えないかと連絡をしたのは夕方のこと。 放課後であろう時刻に返信がきて、そのまま長岡の部屋に直接来た。 好きな本を読んでも良い、テレビも、冷蔵庫も開けて中身を減らして良い。 次々と送られてくるメッセージに少しだけ気持ちが軽くなった。 過保護と言うより先回りが早い人。 だから、なにかあったのだろうと理解はされているはずだ。 「遥登、背中になら抱き付いて良いぞ。 手ぇ洗ったり麦茶飲んでる間だけどな」 その優しさに甘えさせてもらう。

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