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第283話

「おかえり」 『ただいまです』 「飯食ってきたか?」 『はい。 お代わりしてきました』 本当によく食べる子だ。 ただの大食いではなく、きちんと綺麗に、そして美味そうに食べるので見ていても気持ちが良い。 食べる速度自体はゆっくりだが、よく噛んで食べているだけなので特別遅いという訳でもない。 親御さんがどんな人が、三条を見ていれば分かる。 そんな子だ。 多分、そういうところにも惹かれたんだ。 直感で分かる美しさ。 正しさ。 自分にはないそれらはキラキラと輝いている。 「そりゃ、安心だ。 俺が食わせて、ご両親が作ってくれたの食えねぇなんて失礼過ぎんだろ」 『大丈夫ですよ。 スパゲッティと米は別ですから』 同じ炭水化物でも、味付けが違えば良いのか。 いや、分からなくもない。 極端な話、炒飯を食いながら白米も食える。 「似てきたのか…?」 『どうかしましたか?』 「いや、なんでもねぇよ。 で、なんか楽しそうだな」 『そうですか? あー、弟達の仲が良かったです』 「弟達はいつも楽しそうじゃねぇかよ」 『自慢の弟達ですから。 歳も離れててあんまり喧嘩らしいこともしませんからね』 三条の家族の話は聴いていても楽しいのが分かる。 特に弟達。 にこにこしながら楽しそうに話す内容をうんうんと聴く長岡も同じ顔になっていた。

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