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第284話

平日は暇だ。 大学の夏休みはこれと言った課題もなく、実習で足りないと思ったことを補う為に使ってるいるのだが、ボーッとする時間も多い。 すっかり秋めいてきた外をリビングに寝転がり眺めた。 さつまいもご飯食べてぇな… 目を閉じて食べたい物を考える。 芋、栗、きのこ。 秋茄子も美味しい。 食べ物を考えていると腹が減ってくる。 きゅるるる…っと腹が鳴り響く。 ナー なー? 「誰…?」 目を開けると可愛い三毛猫が三条を見ていた。 腹の音にしては可愛過ぎる。 「可愛いね。 ここら辺の子?」 ゆっくりと目を細め、頷く。 「一緒だね。 俺の家は、ここ」 まるで言葉が解るように毛繕いをはじめた。 ぺろぺろと身体を舐めて身嗜みを整える。 猫は2歳くらいの知能があると長岡が言っていた。 特に名前。 あと、きゅーる。 あれは魔法の言葉らしい。 多少の言葉は聞き分けられるらしく、声色や響き、子供が感じ取れるものは理解出来る賢い子、と。 「お話出来るんだ。 嬉しいな。 誰もいなくて暇なんだ。 また遊びに来てよ。 お話ししよ」 長岡が猫を好む理由が分かるようだ。 犬のように分かりやすく好きを伝えてくることはあまりない。 けれど、悪くないと思えばそこにいてくれる。 この距離感なのだろう。 「付き合ってくれる?」 今度は無視だ。 顔を洗うのに夢中。 けれど、そんなところも可愛らしい。 「気が向いたら来てね」

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