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第291話
内腿の方へと手を滑らせる。
ボトムスの中を知っている。
細いけれど、筋肉がしっかりとついた太股だ。
今は自分だけが見ることを許されている。
「だって、触ってて良いって」
「えっち」
「違います…。
好きだから、さ、触ってたい、です」
「ちんこがイライラすること言うなって。
ラブホ行くか?」
「え…」
嘘か本当かわからないトーンに、三条は動きを止める。
今日もしっかりと晩ご飯を食べた。
腹の掃除だってしていない。
時間制限のあるホテルで準備をしていたら……って、ナニを考えているんだ。
これでは、やる気満々みたいじゃないか。
そんなの、はしたない。
「嘘……?」
「さぁ?」
ぶわわっと体温が上がった。
パッと手を離し握って膝の上に揃える。
今更遅いかもしれない。
チラリと隣を一瞥すると、喉で笑っていた。
「またっ、からかったんですね…っ」
「ほんと素直だよな……かわい」
「また、触っちゃいますよ」
「触っててくれよ。
それについては追々、な」
そんなことを言われても、触れたい。
体温がじんわりと手のひらに伝わるのが嬉しいから。
生きている温度だから。
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