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第294話

「もう少し運転するから待っててくれ」 「はい…」 まだ照れの残る顔で頷く可愛い恋人を待たすのは勿体ないが、コンビニの駐車場ではなにも出来ない。 触れ合いだってそう。 この子の反応を見れば、その触れ合いが“普通”かどうか判断出来るだろう。 この良い顔を他人に見せるなんてさせたくない。 ゆっくりと自動車を走らせ、ドライブの続き。 三条はペットボトルを握っている。 もう先ほどのように触れてはもらえないの。 残念だなと思っていると、三条がこちらをチラチラみはじめた。 「どうした?」 「あ…の、停車したら、俺からも触りたいです……良いですか?」 「勿論。 今触っても良いし、遥登の好きにして良いからな」 「はい」 返事だけで触ってはこないが、空気が嬉しそうなので良いか。 穏やかな空気に長岡も上機嫌で車を走らせる。 特別な目的地はないが、三条と一緒ならどこだって特別になる。

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