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第295話

到着したのは、川沿いの公園。 誰も居らずシンとした空気は少しだけこわいようにも感じる。 「はい、2人きり」 「っ!!」 2人きり。 なんて嬉しい言葉だろう。 そっと手を伸ばし長岡に触れると、長岡からもてを握ってくれた。 「少しだけイチャイチャすっか」 「外で…、ですか……?」 「そう。 外ではい嫌か?」 バレたらどうしよう。 見られたらどうしよう。 揺れる車体をSNSに面白いおかしくアップされたら。 考えることは沢山あるのに、身体は頷くことを選んだ。 「ほんと可愛いな」 「男に可愛いって……」 「格好良いよ。 なにせ、俺の自慢の彼氏だ。 違うな。 旦那だな」 「…っ」 近付いてくる顔にぎゅっと目を閉じると、カチッとシートベルトが外された。 セックスはともかく、口と口の接触で万が一があったら。 長岡は自分との関係を伝えなくてはいけなくなる。 教職だけは、長岡の好きな古典だけは奪いたくない。 すると、意とは反してゴチッと額が触れ合った。 目を開けると、そこには真剣な目。 「愛してる。 だから、もう少しだけ守らせてくれ」 だからこそ、マスクも外さず触れ合うのも少しだけ。 キスだってしていない。 長岡の気持ちは、痛いほど伝わってきている。 深く愛してもらえていると、自信がある。 長岡の愛は生半可なものではない。

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