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第297話

三条の手が、マスクの上からそっと頬を撫でた。 額をくっ付けたまま目を見ると、慈愛で満ちたあたたかなものでいっぱいだ。 三条の目だ。 いつもの目。 好きになった目。 「いつも守ってくれて、ありがとうございます。 俺も、弟達も、元気でいられます」 「本当は精神的なところも守りたかった。 けど、守り切れなかったろ。 ごめんな」 「そんな…っ。 あれは、俺が悪いんです」 「遥登は、なんも悪くねぇよ。 俺の自慢の恋人が悪い奴な訳ねぇだろ」 「でも……」 マスクの上から鼻をぎゅっと摘まんでやった。 真面目なのは三条の良いところだ。 頑固なところもな。 けれど、自分を卑下したり傷付けるのは駄目だ。 俺は、三条が丸ごと好きだから。 三条本人でも、悪口は言わせねぇ。 「全部、俺だけが良い」 「…へへっ」 人の告白にふにゃふにゃと笑い出した。 本当に…。 けれど、こっちの顔の方が似合っている。 「後ろ行こうぜ。 イチャ付きてぇ」 「はい」

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