296 / 729
第297話
三条の手が、マスクの上からそっと頬を撫でた。
額をくっ付けたまま目を見ると、慈愛で満ちたあたたかなものでいっぱいだ。
三条の目だ。
いつもの目。
好きになった目。
「いつも守ってくれて、ありがとうございます。
俺も、弟達も、元気でいられます」
「本当は精神的なところも守りたかった。
けど、守り切れなかったろ。
ごめんな」
「そんな…っ。
あれは、俺が悪いんです」
「遥登は、なんも悪くねぇよ。
俺の自慢の恋人が悪い奴な訳ねぇだろ」
「でも……」
マスクの上から鼻をぎゅっと摘まんでやった。
真面目なのは三条の良いところだ。
頑固なところもな。
けれど、自分を卑下したり傷付けるのは駄目だ。
俺は、三条が丸ごと好きだから。
三条本人でも、悪口は言わせねぇ。
「全部、俺だけが良い」
「…へへっ」
人の告白にふにゃふにゃと笑い出した。
本当に…。
けれど、こっちの顔の方が似合っている。
「後ろ行こうぜ。
イチャ付きてぇ」
「はい」
ともだちにシェアしよう!