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第319話

ゴクン、と嚥下する音が車の中に響いた。 の、んだ… 何度そうされてきても慣れない。 自分の身体でつくられたモノが飲み込まれる。 まるで自分が摂取されているみたいな不思議な感覚。 覚めない頭はいまだぽやぽやする。 「また飲ませてな」 「……正宗さんが、飲ませて……くれるなら、」 「えっち」 口ではいつもの軽いことを言いながらも、手は赤くなった手首を擦っている。 こういうところに三条は愛情を感じていた。 口でも態度でも愛を伝えてくれる人。 激しい求愛ではないが、きちんと手渡されるそれらが三条は嬉しい。 嘘を吐ける口より、信じたいもの。 視線や触れる手の優しさ。 言葉尻に含まれるもの。 「今度は、シックスナインすっか」 「し…たい、」 長岡はかわらず色気を漏らしながら色っぽく目を細めた。 そして、耳の縁を爪先でなぞる。 「そ。 シックスナイン。 前もしたろ。 あれ、またしような」 「、……は、い」 「約束」 耳に触れる手にそれを伸ばし、小指を絡めた。 「約束です」 「ん、約束」

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