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第323話

『ん? なんかしたか?』 「え、」 『腹痛てぇか?』 お互い風呂を済ませ、いつものように通話を繋げた。 そうしたら、繋げて早々言い当てられた。 「腹…、大丈夫です」 『そうか? なんかあったら、すぐに言ってくれよ』 「はい。 ありがとうございます」 言えない。 風呂で自慰をしてアナルに石鹸が滲みているなんて、恥ずかし過ぎる。 ついさっきイったばかりなのに、またオナニーをしたなんて猿みたいだ。 それに、腹は大丈夫。 それは本当だ。 『遥登、分かりやすいからな。 風呂でオナった?』 「え゛…」 『ほらな』 「なんで…」 『いや、その顔見たら分かるだろ。 俺のシャツ使ったのか?』 顔? 顔ってなんだ。 だって、着替えの時に脱衣所で鏡を見たけど普通だったぞ。 「シャツ……ではなく、て…」 『うん?』 「…………そうぞ、う」 『へぇ』 にっこりととびきりの笑顔を見せる長岡が見られない。 すごく良い顔だ。 写真に撮りたいくらい。 だけど、恥ずかしくて顔を上げられない。 『気持ちかった?』 「…それは、……はい、」 『見せてくれれば良いのに。 見られんの好きだろ』 「……」 『はーる』 「…はい、」 『顔、見てぇなぁ』 「……恥ずかし、ですから…」 『だから見てぇんだよ。 見せられるか』 「……すこし、だけ」 顔を上げると甘い笑顔が拡がっていた。

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