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第325話
長岡から借りた服を着ると抱き締められているように錯覚する。
何度着てもだ。
『寝れるか?』
「はい」
『あったかくしろよ。
風邪ひいたら会えねぇぞ』
「ちゃんと正宗さんの服も着ました」
ふとんに潜り込み、自身の体温でそのにおいは更に濃くなる。
長岡のベッドに比べたら微々たるものだが、これはこれで中々。
ふにゃぁっと頬の筋肉が役割を放棄した。
『かわい』
「男に可愛いは褒めてますか?」
『褒めてる。
愛おしいって意味だよ。
愛って漢字は同じだろ』
「なら、正宗さんも可愛いです」
『こんなおっさんにかよ』
「愛おしいですから」
誰よりも、しあわせにしたい。
家族みたいで、それよりもおっきななにかがある人。
距離が離れていても、そんなのは関係ない。
大切な人。
『なら、夢にも出てこい』
「はいっ」
夢の中で会いに行くから、またデートをしてください。
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