324 / 729

第325話

長岡から借りた服を着ると抱き締められているように錯覚する。 何度着てもだ。 『寝れるか?』 「はい」 『あったかくしろよ。 風邪ひいたら会えねぇぞ』 「ちゃんと正宗さんの服も着ました」 ふとんに潜り込み、自身の体温でそのにおいは更に濃くなる。 長岡のベッドに比べたら微々たるものだが、これはこれで中々。 ふにゃぁっと頬の筋肉が役割を放棄した。 『かわい』 「男に可愛いは褒めてますか?」 『褒めてる。 愛おしいって意味だよ。 愛って漢字は同じだろ』 「なら、正宗さんも可愛いです」 『こんなおっさんにかよ』 「愛おしいですから」 誰よりも、しあわせにしたい。 家族みたいで、それよりもおっきななにかがある人。 距離が離れていても、そんなのは関係ない。 大切な人。 『なら、夢にも出てこい』 「はいっ」 夢の中で会いに行くから、またデートをしてください。

ともだちにシェアしよう!