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第326話

「お、この味噌汁美味ぇな」 「お口にあって嬉しいです」 冷えてきたからか、あたたかい汁物が一層美味い。 それに、隣に恋人だ。 まずい訳ないだろ。 一緒に食える食事ほど美味いものはない。 こんな世の中になって一緒に食事をする回数はグッと減ってしまったが、それでもこうして楽しめる時はうんと楽しむに限る。 出来ないことを数えたって腹が立つだけだ。 視線は少しでも良い方に向けた方が精神的に良い。 「鮭も美味い」 「そこのスーパーのですよ。 今日、安かったんです。 このほうれん草も」 鮭の味噌漬けは、味噌が少ししょっぱくて白米が進む。 ほうれん草とえのきのおひたしも美味い。 なにを食っても美味い。 「やっぱ、遥登と飯食うの最高だな」 三条はふにゃっと表情を緩めるとはにかむように笑った。 何度見ても好きだと思う。 毒素が消えていくような不思議な気持ちになる。 この子は、不思議な力のある子。 頬袋をパンパンにしてモグモグと食べる姿も大好きだ。 すごく三条らしい。 「レシート寄越せよ」 「でも…」 「作ってもらった分上乗せすんぞ」 「俺も食べてますし、半分…」 これもな。 「だぁめ」 「……でも」 「その分の金で、やぁらしいの買おっかなぁ。 でっけぇディルドとか、拘束具とか。 あ、貞操体も」 「渡します…っ」 箸と茶碗を置くとリュックの中から財布を取り出した。 そして、手渡されるレシート。 ころころ変わる表情も良い。 明るい室内なので、その変化がよく分かる。 「やっぱ、遥登と飯食うの最高だな」

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