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第329話
頭からブランケットを被せ抱き締めると、そのままベッドへと雪崩れ込んだ。
細くてあたたかい身体。
何度も抱き締めてきたから、見なくたって恋人だと分かる。
パーカーの上から背中を撫でると背骨のボコボコした感覚が分かった。
今この部屋で晩飯を食べて、帰宅してから自宅でまた食べて、その栄養は脳にいくのか。
全く身には付かないが、逆にある程度の量を食べないと痩せていくらしい。
やはり、すべて脳にいくのか。
「沢山、食えよ」
「え、はい」
「大きくなれ」
「正宗さん越しちゃいますよ」
「越せるもんなら越してみろ。
背伸びしてやるぞ」
ただのイチャ付きに三条の声はどんどん嬉しさを増していく。
声色だけでそれが分かる程だ。
大好きな飼い主が帰ってきた時の犬みたいに、両親を見ている赤ん坊の目みたいに、分かりやすく反応を映している。
更に抱き寄せるように抱き締めると、おずおずと手が回ってきた。
「たまにはベッドでイチャイチャも良いな」
「…はい。
嬉しいです」
「照れんなよ。
恋人だろ」
「そうですけど…。
正宗さんが言うと、なんかえろく聴こえて…」
「なんだそれ」
なんてことのない会話だ。
だけど、これが良い。
大好きな子とだから、これが良いんだ。
肺いっぱいに清潔なにおいを吸い込み、帰したくないなと思う気持ちを鎮めていく。
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