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第330話
ブランケットと抱き締められているだけではなく、食後も相まって身体があたたかい。
うとうとと気持ちの良い睡魔が頭を撫でる。
……寝そう
…………やばい
帰らなくては、という意識があるので本当に寝落ちはしなさそうだが、目蓋が重くなってきた。
良いにおいも安心する。
長岡の隣は無防備になれる。
ゆっくりと目を閉じ、その人に埋もれていると腰を抱いていた手が自分を手繰り寄せた。
「やべ、寝そう…」
長岡もそうなのかと眠い目を開いた。
すると、コツッと額が恋人のそれとぶつかる。
濃厚な接触が出来なくなってから、長岡は時々額をぶつけてくる。
猫の挨拶みたいだなと思っていたが、最近はキスのかわりなのかなとも思う。
どちらにしても、好きになった行為にはかわりない。
「遥登、起きてるか?」
「はい」
「眠そうな顔してんな。
車の中で寝てな」
「起きてます。
起きて、正宗さん見てます」
「寝てれば良いのに」
同じ時間を使いたい。
会える時は、目一杯長岡が良い。
まるで綾登みたいな考え方だ。
だけど、それが本心。
「正宗さんと一緒が良いです」
「眠そうな顔して、そんなこと言って…。
じゃ、あと5分だけこのまま。
そしたらデートな」
「はい」
念には念を入れ、アラームをセットしまたくっ付く。
心も身体も元気になっていく。
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