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第331話

トイレから出ると玄関のドアが開いた。 学校に呼び出されていた兄が帰ってきたんだ。 「おかえり。 先に飯食ったよ」 「ただいま。 ごめん、遅くなった」 「別に良いだろ。 いつも家にいんだし、兄ちゃんも気晴らししねぇと」 「ん、ありがとな」 一緒にリビングへと入ると兄からふわふわ良いにおいがした。 兄は大丈夫。 根拠もなく、そんな風に思う。 勿論、悔しい気持ちはある。 大好きな兄を支えたい。 頼って欲しい。 だけど、大切なのは“兄”だ。 兄が心も身体も元気でいてくれることが大切。 その為の協力だと思えば、許容出来る。 なにせ、兄とは血が繋がっているんだから。 同じ血液成分が流れていると思えば、まぁ。 その人は願っても持てないものだからな。 「今日の漬け物、ばあちゃんのやつだよ」 「楽しみだな」 「美味かったよ」 「あれ、綾登は?」 「寝た。 飯食いながら頭カクカクさせてて、風呂入ったら嘘みてぇに寝落ちてた。 保育園楽しかったみたいだし、すげぇ遊んだんじゃねぇかな」 「そっか」 マスクをゴミ箱に捨て、そのまま手洗いうがい。 身を屈める後ろ姿に少しだけ安心した。

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