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第332話

「飯、盛るよ」 「ありがとう。 あ、そうだ。 甘味屋寄ってきたからお土産あんだよ。 栗どら焼きと芋羊羹」 タオルで拭いたばかりの手で、リュックの中から紙袋を取り出し差し出してきた。 有り難く受け取り中を見れば芋羊羹は1本丸々入っている。 しかも、すごく美味そうなやつ。 「うはっ! 美味そ!」 「美味そうだろ。 食いな。 俺も食い終わったら食うから」 「お茶も煎れよ」 ルンルンっとご機嫌な弟を見る兄の目は、この1年でグッと元気になった。 やっぱり、あの良いにおいの人のお陰なんだろうなと思う。 どこかで嗅いだ記憶はあるのだが、誰だか分からない人。 絶対に会ってるはずなんだよな… どこだっけな 分からないが、その人に感謝する。 ありがとう。 「あ、俺もあったかいお茶頂戴」 「うぃー」 「肉じゃが美味そう。 沢山食っちゃお」 兄の晩飯に付き合いながら、あったかいお茶と芋羊羹を味わった。

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