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第335話
繋いでいる手が大きく引かれた。
「どーぐり」
指を指しながら、早く早くと急かす綾登。
公園入口から遊具がある場所までの遊歩道。
そこに転がるどんぐりを、小さな指が摘まんだ。
三条は、すぐにしゃがみこみ同じ目線になってにこにことした顔を向ける。
「ほんとだ。
トロロのと一緒だな」
「おなじね」
風は冷たいが、すっきりしていて気持ちが良い。
例えそれが今だけだとしても、外の空気は良い。
良い気分転換だ。
「こえ、おっき!」
「ほんとだ。
おっきいな」
「んっ」
綾登はそれをポケットに入れ、また次のを探す。
それを見守りながら、穏やかな空気の流れに三条は肩の力を緩めた。
勿論、綾登にとって危険がないかの注意だけは怠らずに。
「あ!
ぼーしっ」
「ほんとだ。
可愛い帽子被ってるな」
「なっ!」
じーっと見詰めながらなにかをうにゃうにゃ喋り、また拾う。
「綾登、どんぐり入れる袋いる?」
「あーとます」
「どうぞ。
俺が持ってようか。
ここに入れてね」
黄色い葉っぱ。
赤い葉っぱ。
どんぐりに、怪しいきのこ。
流石に銀杏を拾うのは止めたが、公園は秋に染まっている。
「秋だな」
「なぁ」
「楽しいな」
「うんっ!」
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