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第339話

「お、本当に落ちてる」 綾登よりずっと大きな手がどんぐりを摘み上げた。 同じ大きさのどんぐりのはずなのに、うんと小さく見える。 「正宗さんの手、大きいですね」 「あ? 今更か?」 「弟が持つともっと大きく見えます」 「あぁ。 俺は大人だからな」 ふ、と笑う顔が好きだ。 やわらかな表情が大好きだ。 隣にしゃがむと、一緒にどんぐりを拾った。 「それ、おっきいな」 「これですか?」 「くれるか」 「え、構いまけんけど…」 「ありがとな」 長岡は手渡したそれを嬉しそうに見た。 「じゃあ、お礼」 「?」 しゃがんだまま上着のポケットに手を突っ込んだ長岡はなにかを取り出した。 「どうぞ」 手をとられ、平を差し出すとナニかがのせられた。 公園の外灯に照らされるお菓子。 キャラメルだ。 「キャラメル! ありがとうございます!」 「こちらこそ」

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