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第340話

早速、口に放るとじわっと優しい甘さが溶けた。 「甘い」 「美味いか」 「はいっ。 寒いと甘いのが恋しくなりますよね」 「ははっ。 エネルギー源に欲してんだろ」 この細い身体は生命維持に人よりエネルギー源が必要。 田上も同じことを言う。 今の場合は寒いからだろう。 体温を維持するにも熱が必要だ。 とはいえ、折角のデート。 もう少し外を歩きたい気持ちもある。 「どっかに帽子ねぇか?」 「帽子……あ、これはどうですか?」 「お、良いな。 ありがとう」 2人でしゃがんで、木の実を拾う。 ロマンもなにもないデートだが、長岡とならなんでも嬉しい。 帽子を被ったどんぐりを見付け、長岡に手渡すと優しく目を細められた。 「んじゃ、付き合ってくれたお礼。 そこのコンビニであんまん買って食おうか」 「あんまん、大好きです!」 「知ってる。 ごまのやつだろ」 「はいっ」

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