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第342話
「いただきます!」
結局、公園入り口のゲートボール場のベンチへと落ち着いた2人。
ここならベンチもあり、外灯も真横で明るい。
それに、道路に面しているので“万が一”があってもこの場から離れやすい。
安心した三条は、大きな口であんまんに齧りついた。
「でけぇ口。
美味いか」
しっかり頷く頭に目を細める。
だけど、恋人は律儀だ。
口の中の物を飲み込んでから口を開いた。
「美味しいです」
「美味そうな顔してる」
「正宗さんも、美味しいって顔してます」
「煙草やめてから飯が美味いんだよ。
遥登のお陰だな」
「もう吸わなくても平気なんですか?」
「まぁな。
元々イラ付いた時に吸ってただけだし、本数自体も少なかったからな。
辞めやすかったよ」
今となれば良いきっかけだった。
においが移ることもそうだが、少しでも長く一緒に笑っていたいから。
9歳の歳の差の分だけ長生きしたいから。
だって、この子を置いていくなんて出来ないだろ。
美味しそうに中華まんに齧り付く恋人を眺めながら、自分の決断を再確認した。
「冷めちゃいますよ?」
「熱いのがちょっと早く食えねぇだけ」
「あ」
「あー」
そして、くだらないことで笑い合う。
やっぱり、三条が大好きだ。
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