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第344話
制服にマフラーを巻き優登の準備が整うと、そのまま車で学校へと送り届ける。
車の中も寒いが、この風の中歩くよりはずっと良い。
それに、そのまま開店時間の早いパン屋へと寄り昼ご飯を確保しておけば、今日はご機嫌だ。
「兄ちゃんって、ほんとに受験勉強しなかったんだな」
「急にどうしたんだよ」
「いや、ずっと炬燵に入ってたなぁって」
そういうことか。
自室で課題をしても良かったのだが、炬燵に当たっていればあたたかいし、それにまだ幼い優登がいた。
すぐに兄ちゃんと甘えてきたあの頃。
言うほど勉強はしなかった。
毎日の課題と、予習復習くらい。
猛勉強をして入学が出来ても、それでは授業内容にしがみつくので精一杯になってしまう。
だから、自分に無理のないあの学校を選んだ。
結果として、今の状況で、勉学中や友人以外のものも得ることが出来た。
「蜜柑持ってきてくれる弟もいたしな」
「俺…?」
「そ。
優登といたかったし」
「邪魔じゃなかったか?」
「大丈夫だよ。
俺、邪魔そうにしてた?」
「んーん」
「だろ。
受験、不安?」
「んー…、どうだろ。
よく分かんねぇ」
はじめてのことに不安を覚えるのは当然だ。
はじめての選択。
はじめて人生について考えるのだから。
頑張れ、なんて、簡単には言えない。
ただ、沢山迷って、その結果が優登にとってなにか得られるものだと良いなと願う。
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