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第362話
それからも長岡のプレゼントを考える。
あまり物欲のない人だ。
欲しい物を聴けば、「遥登」もしくは「遥登の時間」と言うだろう。
そんなのはいくらでも融通するのだが、そうではない。
折角プレゼントを贈れるのだから、なにか喜んでもらえるものを手渡したい。
あわよくば、自分のことを思い出してくれるような、傍にいると思ってもらえるようなものだと更に良いのだが。
これが中々難しい。
「はーう」
背中によじ登る綾登に、スマホを弄る手を止めた。
「どうした?」
「おちるね」
「昼寝?
さっき起きばっかりだろ」
「もうちょっとよ」
飲み物も手の届く範囲にある。
蜜柑は1つだけだが、まぁ良い。
「落ちるなよ」
「んーぅ」
パーカーのフード部分にぷくぷくの頬を押し付け寝る体制の三男は、すっかり気の抜けた返事をした。
「にーちゃん、勉強教えて……」
そこに次男が勉強道具を持ってやって来た。
「お、赤ちゃん」
「んん…」
「風邪引くなよ」
「ん……」
とろんとした綾登の声に、優登は諦めたようにそう返した。
これは本格的に動けなさそうだ。
プレゼントのことを頭の片隅に避難させ、優登の課題に目を滑らせる。
一旦休憩をして、また気になるものを探すことにする。
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