365 / 729

第365話

コンビニへと行く為には、この道の角を曲がらなくてはいけない。 行く、のかな…… チラッと盗み見ると、長岡と目が合ってしまった。 「ん? どうした。 コンビニ行きてぇ?」 「あっ、の……」 「あんまん食う?」 「……食べ、たい…ですけど…」 そうではなくて…。 歩みを止めてしまう三条に、長岡も立ち止まる。 「言ってみ」 「……たい、せつなもの…」 「大切なもの?」 「…………ごむ」 「ゴム?」 「………………コンドーム」 どんどん小さくなる声に長岡はふっと笑った。 そして、楽しそうに笑いを隠す。 「ははっ。 買って、使う?」 「俺……なにも、してませんから…」 「今度な。 今日は腹を満たしてやる」 そうして漸く、自分がからかわれていたのだと知った。 「からかったんですかっ」 「気ぃ逸らしただけだ。 からかってなんてねぇよ。 あ、でも、今度は財布ん中にコンドーム入れとこっかなぁ」 気を逸らす? 自分のことを気遣ってくれていたのだと理解した。 そうだ。 長岡はそういう人だ。 「飲み物は俺が買います。 俺がっ、正宗さんの腹を満たしますから」 「甘えれば良いのに」 「もう十分甘えてますよ」 「もっとだよ。 遥登の基準は甘えが足りねぇ」 長岡の優しさに包まれながら、道の角を曲がった。

ともだちにシェアしよう!