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第366話

「夜中に食べるご飯ってなんでこんなに美味しいんですかね」 「俺と一緒だから」 「そっか。 そうですね」 ふにぁと笑う三条に長岡は眉を下げた。 冗談のつもりだったのだが、まぁ良いか。 三条の笑顔が見られるなら、それがなによりだ。 「ありがとうございます」 「うん? 沢山食えよ」 それに、なんとなくなにか考えているようだったが、溶けたような顔した。 恋人でも、家族でも、言えないことはある。 秘密ではなく、単純に言う相手が決まっているだけ。 家族だからこそ言えないこと、恋人だからこそ話せること。 そういうものまで首を突っ込むことはしない。 三条の気持ちが優先だから。 だから、表情に出ると安心する。 三条はよく見ていればとても分かりやすい。 心に素直な顔をする子だ。 「ピザまん久し振りに食ったけど、美味ぇな」 「美味しいですね。 それにしても、正宗さんが持つと小さく見えますね」 「いや、実際小さくなったろ」 「そうですか? そうかな…?」 半分に分けたら3口でイケるんじゃないか…は大袈裟か。 けれど、この歳になって手が大きくなることもないだろう。 ……ないよな? くふっと笑うその顔を眺めながら最後の1口を口にした。

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