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第367話
「スーパーとかに市販のピザまんってあるじゃないですか。
弟、それをこう蓋みたいに切ってチーズ足して温めたりするんですよ。
あと、潰して焼いたり」
「中学生だなぁ。
少しでも多くカロリーとろうとしてんのか。
でも、美味そうだな」
どうでも良いことを話ながら、長岡は次の味──あんまんを割る。
「今度、俺にも作ってくれよ。
覚えるから。
んで、一緒に食おう」
「はいっ!」
「元気な返事だな。
約束だぞ」
手渡す時に触れる指。
ついでとばかりに手を握った。
あたたかいが、いつもより冷たい。
「正宗さん…?」
「んー?」
「良い、んですか…。
冷めちゃいますよ…」
「遥登の方が好きだしなぁ」
「…っ。
今日は…、なんか雰囲気がえっちです…」
「なら、今日の遥登はいじめたい雰囲気があるな」
「え゛…」
「でも、交番近いし寒いから出来ねぇなぁ。
なぁ、遥登」
暗がりでも分かるほどキョドる姿がより加虐心を煽ってくる。
写真を撮るくらいはイケるだろう。
あんまんのあんこを細い指に掬わせ、唇に塗ったくる。
「え…、なに……」
「舐めろよ」
「……は、い」
ペロッとあんこを舐める赤い舌にカメラを翳し、動画を撮影した。
「美味い?」
「お、いしい、です…」
「おかわりは?」
画面越しに目が合う。
どこか甘さを孕む目だ。
「……、ください」
「はぁい」
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