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第369話

「送ってくださって、ありがとうございます」 「気を付けてな」 「はい。 正宗さんも、気を付けてください」 冷たい頭を撫で、別れる前のもうちょっと。 三条の家からは見えない角の所。 だけど、自宅はすぐそこ。 いつもこうして引き伸ばしては、イチャ付く。 どっちが子供か分からない。 「気を付けて帰るよ。 だから、その間に遥登は風呂でよくあったまれ」 「はい」 「ん。 良い返事」 深々と降り積もる雪は手に触れては体温で溶ける。 けれど、確実に体温は奪われていく。 それでも、触れていたい。 ほんの少しで良いから。 「正宗さん」 「ん?」 「正宗さんもですよ。 風邪ひいたら心配しますからね」 そっと手をとられ、やわらかく握られた。 頭の良い子だ。 きっと気が付いているのだろう。 雪を払うように指が動いた。 「敵わねぇな」 「…?」 「愛してるって意味だよ」 「大分違いますよ?」 「いとし、いとしと、言う心を恋っつうだろ。 それと同じ」 「哲学みたいです」 コロッも笑われると、嬉しい反面離れがたい。 あぁ、早く、この世界からすべての病気が消え去れば良いのに。

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