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第370話
綺麗に包装してもらったプレゼントをリュックに積め、しっかりチャックが出来ているか確認する。
濡れてしまえば、折角の包装がポコポコになってしまう。
それでも、長岡は笑顔で受け取ってくれるだろう。
だけど、そうではなくて、折角のラッピングも見て欲しい。
誰かの為に包んでくれたその背景ごと贈りたい。
ただのエゴだと分かっていても、そう願う。
リュックの中に隠している大人の玩具をクローゼットの上段へと隠し、こちらも準備は万端だ。
「はーぅ!」
階段の下から大きな声が聞こえ、部屋のドアを開けると冷たい空気が足元を撫でる。
そのまま素足で廊下へ出ると、
階段をのぞいた。
「綾登、どうした?」
「きぃーてぇー」
「うん?」
おいで、おいで、と小さな手をパタパタと動かす。
まぁ、プレゼントも玩具も隠したし平気だろう。
「ゆーと、こあした」
「壊した?」
そんな大きな音はしなかったが、グラスでも分かったのか。
いや、でも、お菓子を作ると言っていた。
ハンドミキサーか?
それなら、クリスマスプレゼントはちょっと良いミキサーにしよう。
小さな身体を抱き上げると、そぅとリビングのドアの隙間から頭が洗われた。
「フロランタン割れた……」
「びっ、くりした…」
「あっち!」
綾登の指差す方へと行くと、部屋いっぱいに甘いにおい。
そして、台所の作業台の上にはひび割れたクッキー。
「美味そうなのにはかわりじゃん。
食って良い?」
「良いけど、ショック。
美味そうに出来たのに。
ひっくり返そうとしたら、手ぇ滑った…」
「ん!
美味い!」
「あーとも!」
キャラメル部分をペロっと舐め、綾登は満面の笑みを浮かべる。
「いっちゃすき!」
「ほんとか?」
「だいすき」
「じゃあ、良いか」
結局弟も、末っ子に甘い。
甘いお菓子を立ったまま食いながら賑やかな時間を過ごした。
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