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第371話
駐車場から神社へと歩いていると、ザックザックと雪を踏みしめる足音が聴こえてきた。
このリズムと感覚。
「正宗さんっ!」
「遥登」
ほらな。
器用に雪や水溜まりを避けながら駆けてくる恋人。
その伸びのびした姿を見ていると、嫌なことやモヤモヤした気持ちがスゥーッと消えていく。
光の前ではストレスすら霞むんだ。
「走んなって言ってんだろ」
「転びませんよ。
転んだところ、見たことありますか?」
「生意気になりやがって」
髪をぐしゃぐしゃにしながら雪を払うように頭を撫でくり回した。
「ケーキ買ってきたから、車の中で食おうぜ」
「はいっ!」
やっぱ、良いな
この笑顔がなにより好きだ。
しあわせを具現化したらこんな感じなんだろうな。
愛されて育った子によく似合う表情だ。
「あったかい飲み物買おうぜ」
「コンビニ行きます?」
「そうだな。
寄っても良いか?」
「勿論です。
今日は、一緒に行きます」
「今日こそコンドームも買うか」
「っ!?」
コロコロかわる表情も良い。
楽しそうに笑いながら細い小指に自分のものを絡めて、今来た道を戻る。
「ほんと、ですか…?」
「ほんと、ほんと」
「真顔で冗談は駄目ですよ…」
「さぁ?」
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