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第374話

「本当に食いきったな」 「はい。 食べきりました。 美味しかったです。 正宗さん、ありがとうございます」 「ん。 こっちこそ、美味そうに食ってくれてありがとな」 新しいウエットティッシュで手を拭きながら、よく食えたもんだと感心する。 指も首も細いし、骨が分かる。 しかも甘いケーキだ。 流石に飽きるかと思ったが、そんなこともなくパクパク食い付きあっという間に腹の中へと収まった。 長岡は既に口の甘さにコーヒーが止まらない。 甘い物も好きだが、それとこれとは少し話が違う。 ケーキはピースが丁度良い。 これは歳のせいではない。 きっと。 「にしても、このブランケットあったけぇな。 ここで寝れそうだぞ」 「お気に召していただけて嬉しいです」 「洗濯するけど、遥登のにおい付けとけよ。 染み込ませとけ」 「流石に洗剤が勝ちますよ…」 「それでも付けとけ」 漸く車内があたたまり、腹が満ちたことも相まってこのまま眠りたい。 この子の隣なら良い夢がみられる。 けど、それは寝なくたってそうだ。 「今、手ぇ拭いたばっかりだから良いだろ」 手を握り、にっこりと微笑む。 「良いんですか…?」 「今日はサンタが守ってくれるよ」 「じゃあ、甘えちゃいます」 握り返してくれるあたたかい手。 今年も、触れることが出来て良かった。 来年も、再来年も、その次の年も、こうして過ごしたい。 細やかで贅沢な願い。

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