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第375話

うとうとしてくると頭を撫でられた。 母親の手じゃない。 綾登のでもない。 大好きな人の大きな手だ。 優しくてあったかくて、大好きな手。 間違えることはない。 その手に撫でられると嬉しい。 愛してるって伝わってくるから。 誰かすぐに分かるから。 「遥登、愛してる」 長岡は、クリスマスにいつも言葉をくれる。 その言葉も、とても嬉しい。 態度や表情から分かる愛情。 だけど、言葉にされると鼓膜まで喜ぶ。 身体全体が嬉しくなるから、たまらない。 だけど、あまりの眠気に口が開かない。 伝えたいのに。 伝えなきゃなのに。 だから、せめて返事をするように繋いだ手をきゅっと握る。 俺も愛してます。 世界で誰より大切だって。 長岡の纏う空気が和らいだ。 伝わったら良いな。 家に変える前に絶対に言葉にする。 すぅーっと意識がどこかへ飛んでいく瞬間、そう心に決めた。

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