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第376話
「色んな遥登が見ててぇんだよ。
遥登だって、弟の成長は嬉しいけどもっと今も見てぇって思うだろ」
的確な例えだ。
「だから、ゆっくり大人になってくれ」
ポンツ、ポツン、と間隔を開けて並ぶ街灯の下を並んで歩く。
早く守られるだけの立場から退けたい。
だけど、気持ちも分かる。
長岡を見上げると前髪に触れられる。
切らなくてはと思いつつ、先延ばしにしていた伸びた毛先。
それが目元を擽った。
「待っててくれますか」
「当たり前だろ。
待ってるよ」
「じゃあ、もう少し時間をください」
「あぁ。
その間にも、沢山思い出つくろうな」
しっかりと頷き、半歩間を詰めると長岡も同じ顔で笑ってくれた。
もっとこの顔を目に、頭に焼き付けたい。
きっとそうだ。
同じことだ。
なにかを取り零すのが勿体ない。
長岡もそう思ってくれている。
愛されていると解るだけで充分だ。
ぎゅっと繋ぐ手に力を入れ、揺らす。
「デートして、飯食って、昼寝して、セックスもしような」
「声っ、大きいですから」
「今日は早寝かセックスしてる奴ばっかだろ」
「すごい偏見…」
「でも、遥登もしてたろ」
「……っ!」
「早くしてぇな。
な、遥登」
「…………はい」
「んじゃ、年明け部屋に来た時な」
「え?
本当に…?」
「本当に。
楽しみだな」
いつの間にか長岡のペースになり、約束が取り決められていた。
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