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第379話
「はーっ、外の空気うまーい」
「受験生は大変だな」
「大学受験よりマシだろうけどな」
「そうなのか?
俺、推薦だから知らねぇんだよなぁ」
兄弟揃ってワイワイ歩くのは大晦日の夜23時を大きく過ぎた時間。
二年詣りの行き道だ。
今年も残すところあと十数分。
今年も沢山のことがあった1年だった。
特に印象的だったのは、なんといっても教育実習。
実際に経験してみて、沢山のことを感じ、考え、思い知らされた。
それから、長岡の凄さも。
「これだから、兄ちゃんは」
「ん?」
その長岡とは、後程会う予定なのだが、時間はほんの僅かだ。
それでも、会いたいと言ってくれた。
新年早々の贅沢。
その前の兄弟の楽しい時間。
今年も賑やかに年越しを迎える。
「あ、来年って教育採用試験あんじゃん」
「あるな」
「あるな、じゃねぇよ。
なんで余裕なんだよ」
「余裕じゃねぇよ。
でも、勉強してるし、また時間もあるし」
「すっかり忘れてた…。
え、お賽銭五円で足りる?
神って銭げばじゃねぇ?」
「大丈夫だって。
足りなきゃ千円札やろうか?」
「う゛……、それは、やだ…」
「大切なのは気持ちだよ
だから、良いんだよ」
「そういうもん?」
「そういうもん。
ま、俺は優登の受験合格に100円入れるけどな」
「え゛」
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